99年教育部足球學校報告書
報告者:今泉 守正 [日本サッカー協会 ナショナルトレセンコーチ 女子チーフ]
今回実施された足球學校は、Team Chinese Taipeiのビジョンである「アジア4強」を達成するために作成されたプログラムである。この ビジョンを達成させるためには、中・長期的な取り組みが必要である。中期的な取り組みとしては、ユース年代の育成・強化。長期的な取り組みとしては、指導 者養成が必須である。その意味で、今回のプログラムは、中学1年生~高校3年生を対象としたユース年代の育成・強化プログラムとユース年代の選手をどのよ うな考え方でコーチングしていくのかという指導者の取り組みを同時に行ったものである。
今回の足球學校を実施する上で重要な要素として、トレーニングするコーチが内容を理解することと実際にコーチングするポイントの共通理解があげられる。 これに関しては、足球學校開始2日前より、指導者のシミュレーションを行った。台湾体育学院の呂先生を中心にして、実際にコーチングデモストレーションを 行いながら、時間をかけて行った。また、1つのトレーニングをどのように考えて構築しているのかを説明し、一つのトレーニングにおいて選手に「何を伝えて 行くのか。」「なぜこのトレーニングなのか」「なぜ、このオーガナイズなのか」を発問しながら共通理解を深めていった。短時間で大変な作業であったが、全 員が、この足球學校を成功させようと取り組んだ。
【選手向け】
14日午後 基本テクニック
15日午前 ポゼッション 午後 フィニッシュ
16日午前 守備の基本 午後 試合(11人対11人)
17日午前 ポゼッション② 午後 ゴールチャンスを作り出す攻撃
18日午前 まとめの試合
14日 スポーツマンシップ(林先生)
15日 プレーの原則(選手・指導者)
16日 コーチング法 (指導者)
17日 プレーの分析・プランニング (指導者)
参加選手を5グループに分け、各グループの人数を14名前後とした。前半を終えた段階で、グループを変更し、4グループで実施した。
5日間常に全員で言い続けたのは、「観ること」「準備」「動きながらプレーすること」「アプローチ」の4つである。
初日は、止まってプレーしていた選手は、日ごとに「観ること」をまず行い、考える。そして、「何を準備するのか考える。」そして、考えたことを「動きな がらプレーする」ことにチャレンジしていった。この短期間で修得することは、困難であるが、5日間選手は、積極的に挑戦し、頭と身体に覚えこんだのではな いかと感じた。そして、所属チームに持ち帰り、毎日のトレーニングで続けることが習慣化の第一歩である。
選手たちのプレーが日々変わっていった要因は、2つある。
一つは、選手が「失敗を恐れなかった」ことがあげられる。失敗を恐れずに挑戦することによって、小さな成功が生まれる。その小さな成功の積み重ねこそが、選手の自信となっていくのである。成功した瞬間の選手の笑顔が今でも忘れずに記憶に残っている。
もうひとつは、体育学院学生の情熱ある指導と分析する眼力である。各グループを任された台湾体育学院の学生コーチは、選手ひとりひとりに目を配り、丁寧に 指導していた。中には、代表選手もいる。自分のプレーをデモンストレーションとして見せて、選手にイメージさせること。そして、選手の「何が」原因で成功 に導けないのかを分析する眼力を日ごとに伸ばしていったことは、学生諸子の取り組む意識の高さを感じた。
参加した全員の情熱だけでは、さらなる向上は望めない。その意味で、今回実施した上での課題と今後の展望を挙げる。
サッカーゴールが不足していた。また、設置されていた、ゴールは非常に重く、持ち運びに苦労した。トレーニング効果を上げるためには、サッカーゴールの個数と移動しやすいゴールの設置が必要である。
今回コーチングしていく上で、選手が選択したプレーに対して発問したが、答えることができる選手が少なかった。日頃より、自分のプレーを説明することが少ないのではないか。サッカーを考えてプレーしていくためには、自分のプレーを言葉で説明する能力が必要である。
今回の事業が単発では、効果が望めない。これらのユース育成は、継続してこそ効果が得られるものである。次年度以降も継続して実施していくことが重要である。
ユース選手を育成していくためには、指導者のレベルアップは最重要課題である。チャイニーズ・タイペイの道を作り上げるためには、指導者を養成し質を向上していく方法を構築することである。
今回のプログラムに参加できたことは、私自身にとって非常に素晴らしい機会であり、貴重な財産となりました。教育部王先生をはじめ皆様方に深く感謝いたします。